多くの人がM&Aに関する税金の問題について不安や疑問を感じていることでしょう。私自身も、初めてこの問題に直面したとき、深い不安を覚えました。「高額な取引が行われても、その大部分が税金として吸い取られてしまったら、結局は赤字になってしまうのではないか?」という疑問が何度も頭をよぎりました。こうした事態は何としても避けたいものです。
本記事では、中小企業のM&Aに関する基本的な要点を解説し、税務知識がない人でも理解できるように説明します。
結論ーいくら払ったの?
M&Aに関連する税金の種類
中堅から中小企業のM&A税務では、単に株式を売却した際に生じる個人の所得税や住民税だけでなく、より広範な税金の検討が必要です。M&Aのスキームによっては、法人税、消費税、贈与税、相続税など、多種多様な税金が関わってきます。
譲渡側の税務検討
- 所得税:オーナー社長がM&Aで株式を売却した場合、その売却益は所得税(復興税を含む)の対象となります。
- 住民税:同様に、株式売却益は住民税の対象となります。
- 退職金の税金:譲渡企業が退職金を支給した場合も、その金額は所得税と住民税の対象となります。
- 法人税:事業譲渡を行う場合、譲渡企業に対して法人税が課せられます。
- その他:取引によっては消費税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの流通税が課税される場合があります。
譲受側の税務検討
譲受側では、退職金や繰越欠損金など、M&A実施時だけでなく、その後数年間にわたり譲渡企業の税金計算に影響を及ぼす事項について検討する必要があります。これらの検討は、引退するオーナーへの役員退職金や対象会社の繰越欠損金などの個別事項だけでなく、採用するスキームごとに生じる税務上の問題まで含まれます。
主な税金
当事者 | 取引 | 税務の取扱い | 対象税目 |
---|---|---|---|
個人株主 | 株式譲渡 | 20.315% | 所得税 復興税 住民税 |
不動産売買 ※1、2 | |||
配当 | 最大約50% | ||
役員 | 退職金 | 実質最大28% | |
不動産売買 ※1、2 | 20.315% | ||
法人株主 | 株式譲渡 | 約34% | 法人税 地方法人税 特別法人事業税 法人事業税 法人住民税 |
不動産売買 ※2 | |||
配当 | 一定の非課税の措置あり | ||
譲渡企業 | 退職金 | 一定金額を損金算入 | 法人税 地方法人税 特別法人事業税 法人事業税 法人住民税 |
不動産売買 ※2 | 約34% | ||
繰越欠損金 | 一定金額を損金算入 | ||
譲受企業 | 不動産売買 ※2 | 約34% | 法人税 地方法人税 特別法人事業税 法人事業税 法人住民税 |
配当 | 一定の非課税の措置あり | ||
投資損失準備金 | 70%以下を損金算入 |
※1 長期保有の不動産を前提としている
※2 不動産売買には別途流通税(不動産取得税、登録免許税、消費税、印紙税等)の検討が必要
税務の専門知識
M&Aに関連する税務は広範で複雑です。組織再編やM&A後の資産運用など、多岐にわたる選択肢を検討するためには、広範な税務知識が必要です。頻繁にM&Aに関わることは少ないため、全ての税理士がM&A税務に詳しいわけではありません。そのためM&Aを検討する際には専門的な知識を持つ専門家の意見を求めることが重要です。
私からのアドバイス
M&Aに関わる税金は多種多様であり、その取り扱いは非常に複雑です。譲渡者としては、損失を避け、可能な限り手元に多くを残したいと考えるでしょう。
一人であれこれと悩むよりも、まずは自分で基本的な情報を調べ、それから専門家に相談するのが最善の策だと考えます。